小児矯正を第一期でやめるケース|注意点やポイント、影響など解説【医師監修】

小児矯正を第一期でやめても大丈夫なのか、どのような問題があるのかを知りたいという保護者の方は多くいらっしゃいます。
お子さまの健康や将来にかかわる重要な問題です。
本記事では、小児矯正を第一期で中断する代表的なケースやそのリスクについて詳しく解説いたします。
適切な治療選択の参考にしてください。
小児矯正第一期と第二期治療の目的と違い

本項目では、小児矯正第一期と第二期治療の目的と違いをご説明します。
小児矯正・第一期の目的
第一期治療の核心は、成長期にある子どもの顎の骨を適切な形に導くことにあります。
6~8歳頃の時期には上顎と下顎の骨がまだ柔らかく変化しやすい状態にあり、この特性を活かした治療が効果的です。
クワドヘリックス装置を使用すると上顎の幅を少しずつ広げることができ、狭くなった歯並びのアーチを改善できます。
永久歯がきれいに生えるための場所作りも重要な目標となり、急速拡大装置や機能的な矯正器具により犬歯や奥歯が正しい位置に生えてこられる環境を整えます。
また、指しゃぶりや口呼吸などの悪い癖を取り除くことにも重点的に取り組み、筋機能矯正により舌の正しい位置や飲み込み方を練習することで自然な口の機能発達を促します。
小児矯正・第二期の目的
第二期治療では永久歯が生え揃った段階で歯並び全体を細かく調整することに重点を置きます。
11歳を過ぎると顎の骨の成長も安定してくるため、固定式のブラケット装置を使った本格的な歯の移動が可能になります。
噛み合わせを正しく作り上げることが重要な目標となり、前歯では上下の歯の覆い関係を適切に設定し、奥歯では効率よく食べ物を噛み砕ける機能的な噛み合わせを構築します。
マルチブラケット装置により歯の傾きや根っこの向きを揃え、治療後の安定性を高めます。
顔全体のバランスや口元の美しさといった審美的改善も大切な要素となり、正しい噛み合わせにより顎関節への負担軽減や将来の口腔健康維持にもつながります。
小児矯正第一期と第二期の違い
治療時期の違いとして、第一期は乳歯と永久歯が混在する時期、第二期は全て永久歯に生え変わった時期という歯の環境の差があります。
第一期では生えてくる永久歯の動きを予想しながら装置設計する必要がありますが、第二期では計画的で精密な歯の移動が実施できます。
使用装置も異なり、第一期の機能的矯正装置や拡大装置は顎骨の成長誘導や筋機能改善を目的とし取り外し可能なものが多いのに対し、第二期のマルチブラケット装置は固定式で個々の歯への細かなコントロールが可能です。
治療効果の現れ方も、第一期では顎骨の形状変化や筋機能改善が成長とともにゆっくり現れ、第二期では目に見える変化を実感できる一方で細部調整に時間を要します。
小児矯正を第一期でやめても大丈夫?

本項目では、小児矯正を第一期でやめても大丈夫か否かについてお伝えします。
多くの場合、第二期まで見据えた計画が有用
小児矯正の第一期治療は永久歯が生え揃うまでの準備段階であり、第一期だけで治療が完了するお子さんは少数派です。
多くの症例で第二期治療まで見据えた全体的な仕上げが有用になります。
この理由として、顎の骨の成長には個人差があり、予測通りに顎の幅や噛み合わせが安定しないことがあるためです。
また、乳歯の抜け方や永久歯の生え方によっては、第一期だけでは対応しきれない細かな歯の傾きや回転が残ってしまいます。
第一期治療は基盤作りとしての役割を果たしますが、精密な歯並びと機能的な噛み合わせを実現するためには第二期での本格的な調整が欠かせない場合が多いのが現実です。
一度中断した小児矯正を再開できるのか?
第一期治療を途中で中断してしまった場合でも、ほとんどのクリニックで再開は可能です。
ただし、いくつかの注意点があります。
タイミングの面では、永久歯の生える時期を逃すと歯が不規則に生えてしまい、しっかりした土台形成が困難になります。
交叉咬合が小学生で放置されると顎の左右差が固定化し、将来的に外科的矯正まで検討されることがあります。
費用面では、再開時に器具代や診断料の一部減額が可能な場合もありますが、第二期分の費用は新規患者と同等になるケースがあります。
特に転院した場合は第一期の支払いが無駄になることもあるため事前確認が重要です。
当院のプレオルソ矯正は55,000~440,000円(税込、器具代込み)が目安です(症例により異なります)。
治療効果については、拡大装置を長期間使わないと効果が後戻りし、再装着時に改めて期間が必要になります。
第二期治療も行ったほうがいいケース①:歯並びや噛み合わせが十分に改善しなかった場合
第一期治療で見た目がある程度改善されても、機能面で問題が残っている場合は第二期治療を推奨します。
奥歯の噛み合わせが不安定な状態では、左右の奥歯が前後にずれたままだと将来的に顎関節症や歯の摩耗を引き起こすリスクが高まります。
第二期でブラケットを装着し、噛み合わせ面の勾配や誘導機能を調整します。
永久歯の回転や傾斜が残存している場合、歯ブラシが届きにくく虫歯や歯周病のリスクが上がるため、ワイヤー調整により1本ずつの位置と角度を修正します。
前歯の被さり具合についても、第一期で改善傾向にあっても一定の割合で元に戻ることがあり、第二期でミリ単位の調整を行います。
顔のラインや横顔のバランスも重要で、骨格的な前後差が大きい場合は第二期でワイヤーとゴムを使い自然な口元の調和を目指します。
第二期治療も行ったほうがいいケース②:より整った歯並びにしたい場合
審美的なこだわりが強い場合、第一期で前歯が揃ったように見えても、わずかなねじれや隙間が残っていると笑ったときの歯列が気になることがあります。
左右の側切歯の傾きが2~3度ずれているだけで、写真写りや横顔のラインに微妙な差が生じます。
第二期ではワイヤーの細かな調整により全ての歯を均等なアーチ形状に仕上げることができます。
歯の形や大きさに左右差がある場合も問題となり、側切歯の幅が左右で1ミリ異なるだけで歯列全体のバランスが崩れ、噛み合わせもずれてしまいます。
第二期では細いワイヤーや微小なパワーチェーンを使い、0.5ミリ単位での調整が可能です。
整った歯列を得た後の保定装置の精度も重要で、第二期で仕上げることにより保定装置がぴったり合い、長期的な安定が期待できます。
小児矯正を第一期でやめる代表的なケース

本項目では、小児矯正を第一期でやめる代表的なケースをご紹介します。
通院が難しくなった
小児期は学校行事や塾、習い事で忙しくなりやすく、月1~2回の定期通院が負担に感じることがあります。
例えば、サッカーの遠征やピアノの発表会と重なって予約をキャンセルし続けると、治療間隔が延びて矯正効果が低下する恐れがあります。
また、引っ越しや転勤により通っていた矯正専門クリニックから遠く離れてしまうと、片道1時間以上かかるケースも生じます。
小学生のお子さんにとっては往復の移動で疲れてしまい、途中でやめざるを得ないという判断をすることもあるでしょう。
小児矯正の支払いが難しくなった
第一期治療の総費用は装置や診療体制によって幅があります。
精密検査・装置代・調整料を含めるとまとまった金額になるため、家計状況の変化によっては分割払いでも負担を感じることがあります。
矯正治療は原則として健康保険が適用されないため、医療費控除を検討しても実質負担が大きいと感じるご家庭もあります。
こうした経済的な理由により治療を中断せざるを得ない状況が生じることがあり、これは現実的な問題として多くのご家庭で直面する可能性があります。
子どもが嫌がっている
取り外し式の機能的マウスピース型矯正装置(例:プレオルソ)やヘッドギアなど、口の周りに付ける時間が長い装置を恥ずかしい、つけたくないと感じる子は少なくありません。
学校で友だちにからかわれることを心配して、装着時間をこっそり省略してしまい、保護者や医師の指示通りに使えなくなるケースがあります。
さらに、拡大装置の調整後に違和感や痛みを訴えることがあり、鎮痛やワックス等で対処できるものの、遊びたい気持ちと装着の辛さが両立せず、もうやりたくないと治療そのものを拒否する場合もあります。
加えて、固定式のクワドヘリックス装置では、ワイヤーの周りに食べかすや歯垢が溜まりやすく、丁寧に歯ブラシとフロスを使う必要があります。
面倒でやりたくないと感じて口腔ケアを怠ると虫歯リスクが高まり、結果的に矯正も続けづらくなってしまいます。
第一期治療で満足する結果を得た
混合歯列期にあった前歯の重なりが、クワドヘリックス装置や急速拡大装置で解消され、本人も人前で笑っても恥ずかしくないと感じるようになると、これ以上しなくてもいいかもしれないと納得するケースがあります。
また、ヘッドギアや前方牽引装置を使用して上顎前突が目立たなくなると、横顔のバランスが整い、保護者と本人ともに第一期だけでかなり変わったと満足感を得やすくなります。
さらに、筋機能療法と併用した結果、指しゃぶりや口呼吸がほぼ習慣から外れ、舌の正しい位置が定着すると、このタイミングで一区切りとして治療を終了する判断をされることがあります。
このように見た目の改善や機能的な問題の解決により、保護者とお子さんが治療の効果を実感できた場合、第一期で満足して治療を終了する選択をする家庭も存在します。
効果が感じられない
同じネジ回し式の拡大装置でも、顎の硬さや生え変わり時期によっては思うようにスペースが確保できず、1年経っても歯の並びがほとんど変わらないと感じる場合があります。
こうしたケースでは続けても改善しないかもしれないとモチベーションが下がることがあります。
また、第一期で前歯のスペースは確保できても、犬歯や小臼歯の生える方向が予測と違い、でこぼこが残ることがあります。
前歯はきれいになったけれど、横の犬歯が斜めに生えてきているという場合、そのまま継続しても効果を実感しにくく、そもそも無意味ではないかと感じやすくなります。
さらに、取り外し式装置で週に数日しか使わなかった、寝るときだけ装着といったムラがあると、装置が意図した力を歯や顎にかけられず、期待した効果が得られません。
結果としてこれをやっても無駄と思われることがあり、治療継続への意欲を失ってしまうケースも見られます。
小児矯正を子どもが嫌がる理由

本項目では、小児矯正を子どもが嫌がる理由をご説明します。
歯医者が怖い
歯科医院のユニットや歯を削るタービン、シリンジの「シュコーッ」という水や空気の音は、大人でも緊張する音ですが、子どもには何をされるかわからない機械に見えます。
また、ママが虫歯の治療で痛い思いをした、お兄ちゃんが矯正器具を外すときの音がイヤだったという話を聞いていると、苦手意識が強くなります。
実際、装置の見た目や装着感に不安を感じるお子さんは少なくありません。
さらに、待合室で他の患者の声や器具が床に落ちる音などを聞いて、次は自分の番かもしれないと不安になり、診察室に入るのを嫌がるケースもあります。
子どもにとって歯科医院は未知の場所であり、様々な音や体験談により恐怖心が増幅されやすい環境といえるでしょう。
そもそも歯列矯正の必要性を理解していない
今は前歯が少しでこぼこしているだけで困っていないというお子さんにとって、きれいな歯並びになると将来虫歯や歯周病リスクが下がる、口元のバランスが整って自信が持てるといった話はピンと来ません。
永久歯が生え揃った中学生に比べ、6歳の子どもは見た目より今の遊びが優先になりがちです。
装置をつける、痛い、通院があるといった今感じる不快感が先行し、なんのためにやっているのか分からないと感じるお子さんは多くいます。
拡大装置を毎週回すたびに、なんでこんなことしないといけないのかと疑問を口にするケースがあります。
治療によって痛みを感じている
拡大装置の調整後に、翌日に顎全体が痛む、噛むと痛いと訴えるお子さんがいます。
これは骨や歯根が少しずつ動く際に生じる正常な反応ですが、痛みが続くともうイヤだと感じやすくなります。
第二期で使うブラケットとワイヤーは調整直後に歯全体が締め付けられるような痛みが出ることがあります。
この痛みを経験すると、第一期の装置を再度装着する際にも前に痛かったからと嫌がることがあります。
さらに、金属ワイヤーの端が唇や頬粘膜に当たり、口内炎や傷ができると食事するのも嫌というレベルまで不快感が増します。
特に固定式装置では粘膜保護ワックスをこまめに用いると改善が期待できますが、痛みは治療の過程で避けられない部分もあり、子どもにとって治療を拒否する大きな理由となります。
なお、当院で扱う機能的マウスピース型矯正(プレオルソ)は、一般的に痛みが少なく、後戻りもしにくい傱向が報告されています。
小児矯正を第一期でやめるリスク

本項目では、小児矯正を第一期でやめるリスクについて解説します。
歯並びが元に戻る
第一期で拡大装置や機能的装置などを用いて広げた顎のスペースは、装置を外すと徐々に元の位置に戻る性質があります。
この現象は骨と歯を取り巻く歯根膜という組織が元の位置に戻ろうとする力を持っているために起こります。
保定期間を十分に取らないと、せっかく拡大した骨が後戻りしてしまい、第一期治療で得られた効果が失われてしまいます。
特に成長期の子どもの場合、骨の可塑性が高い分、元に戻る力も働きやすいため注意が必要です。
また、一度後戻りが起こると、再度同じ効果を得るためにはより長い治療期間が必要になることもあり、結果的に患者の負担が増加してしまいます。
顎骨成長バランスの崩れ
成長期の顎の骨は左右や前後のバランスを整えながら伸びていきますが、治療を中断すると、症例によっては咬合や歯列のバランスが崩れる可能性があります。
例えば、上顎の幅だけを広げた状態で治療を終了すると、下顎との協調が取れず、顎の動きが制限されることがあります。
左右のバランスが崩れたまま成長が進むと、顔の非対称性が生じる可能性もあります。
咬合(かみ合わせ)が不安定になる
第一期では前歯や部分的なかみ合わせしか調整できないため、奥歯同士の噛み合わせが不完全なまま治療を終了すると、力のかかり方に偏りが生じます。
この不安定な咬合は歯ぎしりや食いしばりを誘発し、歯のひび割れや知覚過敏を生じることがあります。
また、一部の歯だけに過度な力が集中することで、その歯の寿命を縮める可能性もあります。
さらに、不均衡な咬合を放置すると、後の本格矯正で細かな調整が難しくなり、治療期間が長引く要因となります。
正しい咬合は食べ物を効率よく咀嚼するために重要であり、消化機能にも影響を与える可能性があります。
第一期で部分的に改善された状態から、機能的な咬合を確立するためには、第二期治療での全体的な調整が推奨されます。
永久歯の萌出トラブル
第一期治療で顎の骨を拡大し、永久歯のスペースを確保するのが目的ですが、途中でやめると様々なトラブルが起こりやすくなります。
萌出位置のずれとして、本来犬歯がまっすぐ生えるはずのスペースが不足し、犬歯が隣の歯根を押しながら斜めに顔を出すことがあります。
この結果、後からブラケットを付けたときに抜歯が必要になるケースが生じることもあります。
また、スペース不足により小臼歯が歯茎の中に埋もれたまま生えてこない埋伏歯になることもあります。
この場合、口腔外科手術で歯を露出させ、装置で牽引する治療が追加で必要になり、患者の負担が大きくなることがあります。
永久歯の萌出はタイミングや方向に限りがあるため、適切な時期を逃さないことが重要です。
治療の再開が難しくなる場合がある
一度中断すると、時期や環境によって再開のハードルが上がることがあります。
成長タイミングの逸失として、混合歯列期が終わり永久歯列期に差し掛かると、顎の骨の柔軟性が低下します。
顎の拡大は第二次性徴前が効果的とされ、この時期を過ぎると同じ効果を得るために外科的矯正が検討されることがあります。
また、引っ越しなどで別の医院に移ると、第一期で使った装置が互換性のないことがあります。
新しい医院で再スタートする場合、一から検査や診断料、新規装置代が必要になることがあり、患者負担が増大します。
治療方針や使用する装置が医院によって異なるため、継続性の観点からも同一医院での治療完了が望ましいとされています。
さらに、中断期間が長くなると、それまでに得られた治療効果の評価も困難になり、治療計画の見直しが必要になることもあります。
まとめ

小児矯正を第一期でやめることには多くのリスクが伴います。
多くのケースで第二期治療が必要とされており、中断により歯並びの後戻り、顎骨成長バランスの乱れ、噛み合わせの不安定化、永久歯の萌出トラブルなどの問題が生じる可能性があります。
通院の困難さ、費用負担、子どもの嫌がり、満足感による中断などの理由がありますが、治療の再開が困難になることもあります。
第一期治療は顎の骨が柔軟な時期に成長を誘導する重要な段階であり、第二期では全体的な歯並びと噛み合わせを精密に調整します。
中断により得られた効果が失われ、将来的により複雑で費用のかかる治療が必要になることもあります。
お子さまの歯並びや矯正治療についてお悩みの際は、専門的な診断と適切な治療計画の提案が重要です。
ひらかわ歯科医院では、小児矯正のご相談を受け付けており、年齢や歯列の状態に応じた治療計画をご提案いたします。
