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気になる保険適用の歯石取りとは?
目次
「歯石取り」をご存知ですか?
歯科医院に定期的にメンテナンスに通っている方はご存知だと思いますが、歯石取りは歯周病予防にとって、なくてはならない治療です。
では、そもそも「歯石」とはどうやってできて、なぜお口の健康にとって良くないのかをご説明いたします。
歯石とは歯垢が血液や唾液に含まれているミネラル成分(カルシウム、リンなど)と結合して、石のように固くなったものです。
歯石そのものはただの石なので悪いものではありません。
歯石を除去しないといけない理由としては、そこを住処にして細菌が繁殖し、お口の健康に対して有害な毒素を出します。
この毒素が歯の周りの骨を溶かしてしまう歯周病の原因になります。その他にも歯茎に炎症を起こし腫れるなど、害となる症状を引き起こしてしまいます。
ご存知の方も多いと思いますが、歯周病は糖尿病との関りが深い病気です。
歯石の中で繁殖している細菌の中には歯周病菌があります。
その歯周病菌が歯茎などの毛細血管から侵入します。
この時に人間の体はサイトカインという成分を分泌し、細菌やウイルスに対抗しようとします。
このサイトカインが血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の働きを妨害してしまいます。
そのため血糖値は通常よりも上昇してしまいます。
そして、糖尿病になり血圧が高い状態が続くと体の中の防御反応が低下してしまい、感染症に掛かりやすくなる可能性が高くなります。
歯周病は感染症の1つなので、糖尿病の方は健康な方よりも歯周病の進行が早くなります。
このように、歯周病と糖尿病は互いに悪循環を引き起こしてしまいます。
糖尿病に対してフォーカスを当ててご説明しましたが、この他にも歯周病菌には動脈硬化を促進させ心臓発作を引き起こす原因になったり、お口の健康だけでなく、体全体に害を及ぼす恐ろしい病気です。
そのため歯科医院では歯周病の原因になる歯石を除去することを推奨しています。
歯石がつきやすい場所
歯石は大きく分けて3種類あります。
歯茎より上の部分にできる「歯肉縁上歯石」
歯よりも黄色っぽい色をしており、歯ブラシで磨いても取ることはできません。
歯科医院の専用の器具を使えば比較的容易に取ることができます。
歯茎より下の部分(歯周ポケット)にできる「歯肉縁下歯石」
長期に渡り付着しているため、歯にこびりつき茶褐色をしています。
専用の器具を使っても、取るのに時間がかる可能性があります。
歯周ポケットの内側や歯茎からの出血のある方は特に注意が必要です。
歯石は歯垢が固まってできたものなので、歯垢がついていれば銀歯などの詰め物にもできます。
また、唾液と結合する点で考えると、上奥歯の外側や下前歯の内側といった、唾液を分泌する唾液腺の付近にある歯につきやすい傾向があります。
歯石の落とし方
歯石はとても硬く歯にこびりつくので、一度付着してしまうと日常の歯磨きで取ることは、ほぼできません。
そして、どんなに気を付けて歯磨きをしていても徐々にできてしまいます。
これはどんな方にでも起こりうることなので、歯科医院に行き定期的に除去してもらうとよいでしょう。
では、歯科医院ではどのようにして硬くこびりついた歯石を除去するのでしょうか。
まず行うのは超音波で振動を与え、付着した歯石を粉砕することにより除去していきます。
歯茎より上の部分にできる歯石は、これで大部分を取ることができます。
歯茎より下の部分に付着する硬い歯石は超音波の他にも細い器具を使い、歯石を掻き出すように除去していきます。
この時に、「出血や歯茎の腫れ」があると取り残しが増えてしまいます。
そういった場合は、歯茎を一定の健康状態に戻してから歯石を除去していきます。
この歯茎より下の部分にある歯石を放置すると、歯周病の原因になります。
目安として歯周ポケットの深さが4㎜までを行い、5㎜以上になるとフラップ手術という歯茎を切開し、歯石を取っていく方法を行います。
歯石除去の費用
歯石除去には保険が適用されます。
ただし、歯石除去と同時に虫歯検査と歯周病検査もおこなわないといけません。
これらの検査代を含めて「約3,500円」の費用が掛かります。
現在の保険のルールでは歯石除去だけでは保険が適用できません。
費用の内訳としては以下になります。
- 歯石除去
- 歯周病検査
- 虫歯検査
- 初診費用やレントゲン費用
また、保険を適用した歯石除去を行う場合は、次のような流れにのっとり治療を行います。
1:歯、歯茎の検査を行う
2:歯茎より上の部分の歯石除去を行う
3:数週間後に再検査を行う
4:効果が表れたかどうかの診断を行う
5:歯茎より下の部分の歯石除去を行う
歯石が歯茎より上の部分にのみついている場合は、治療が1回で終わる場合もあります。
しかし、歯茎より下の部分についている歯石を取る場合は1回の治療で終わらせることはできません。
歯茎より下の部分は平均的には右上、左上、右下、左下の様に4回に分けて行うことが基準とされています。
ただし、状態によっては治療回数が異なってきます。
また、同時に歯の磨き方の確認も行います。
歯垢がついていたり、歯茎が腫れた状態で歯石を取ると出血をする可能性が高くなります。
出血がある状態で歯石を取ると、取り残しの可能性が高くなる他、痛みが生じる可能性も高くなります。
また出血により再び歯石ができやすくなるリスクもあります。
そのため、歯磨きのやり方を改善し、出血がない歯茎の健康状態にしてから歯石を取ります。
保険適用外の歯石除去
歯科医院で行うクリーニングにはPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)という治療があります。
これは保険適用外の治療になるため、歯科医院によって内容や費用は変わってきます。
費用としては約5,000円から20,000円が一般的です。
幅がある印象を受けますが、10,000円以内での設定にしている歯科医院が多いという印象があります。
保険適用のクリーニングと比べると少し割高にはなりますが、通院する回数を1回で済ませることも可能なので、仕事などで忙しく何度も歯科医院に通院することが難しい方にはお薦めできます。
一般的なPMTCの内容は次のようになります。
1:歯の状態を診察
歯垢や歯石、着色汚れがないかのチェックを行います
2:歯石除去
汚れや歯石を取り除きます
3:研磨
研磨ペーストをつけたラバーカップという器具を使用し、歯を1本ずつ丁寧に磨いていきます
4:フッ素を塗る
最後にフッ素を塗り、歯を強くします
あくまで一般的な内容ですので、歯科医院ごとに内容に違いがあります。
自身が施術を受ける歯科医院がどのような内容のPMTCを行っているのかと、自身の要望をしっかり話し合い施術を受けるとよいでしょう。
自宅でできる歯石除去
「歯石取りはしたいけど歯科医院に行くのは怖い」という話を時々聞くことがあります。
そういった方の中には自分で歯石取りを行う方もいらっしゃいます。
日用品を取り扱うお店では「スケーラー」という歯石除去を行うのに歯科医院でも使う器具が販売されています。
私が見た市販で買えるものでは安いもので1,000円、良質なもので2,000円~3,000円のものがありました。
これに加えて消毒液やコットンを合わせると、合計で3,000円を超える費用が掛かる場合があります。
費用だけで見ると、歯科医院で行う場合は「約3,500円」なので、差はほとんどありませんでした。
そして、自分で歯石除去を行った方に伺うと、きれいに取ることができず歯茎も傷つけてしまったという話を聞きます。
歯科医院でも、多くは超音波の振動を使いながら取っていき、細かな部分をスケーラーで丁寧に取っていきます。
また、歯茎より下の部分は優秀な歯科衛生士でも自分では取ることができません。
そして歯周病にとって悪影響を及ぼすのが、この歯茎より下の部分の歯石です。
さらに歯科医院で行う歯石除去は歯の表面をきれいに磨き上げます。
この工程を行わないと歯の表面がざらつき、細かな歯石が残ってしまい、すぐに新たな歯石がついてしまいます。
これらの理由から、私としては自宅での歯石除去はお勧めできません。
まとめ
定期的にお口の中の環境をチェックさせてもらうことにより、歯石を取るだけでなく、新たな病気を未然に防ぐことも可能です。
お口の中の病気は歯周病の様に自覚症状が無いものや、自分で思っている以上に深刻な状態になっている虫歯なども見つけることができます。
一生自分の歯で食事ができる方の多くは、定期的に歯科医院に通い、きちんとメンテナンスを行っている方がほとんどです。
昔は歯科医院に通っていたけれど、今は足が遠くなってしまった方も予防のためにも検診に行ってみては如何でしょうか。