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乳歯の歯並びを正常にするために知っておきたいこと
目次
乳歯の歯並びで悩みの方に、歯並びを正常にするためのご自宅で取り組める方法や、歯並びに悪影響を与える原因についてご説明いたします。
成長するにつれて乳歯は永久歯へと生え変わっていきますが、乳歯時のケアを怠ることは歯だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす原因となる場合がございます。
まずは、意外と知られていない乳歯と永久歯の違いからご説明いたします。
永久歯との違い
一目でわかる乳歯の永久歯との違いは「歯の本数」です。
永久歯は親知らずを除き全部で28本あり7種類に分けられます。
それに対して乳歯は全部で20本あり5種類に分けられます。
乳歯が生えだすと、ものを噛む行為が可能になるので、顎の骨格や筋肉の発育と自分で食べる力を身に付けるトレーニングも始まります。
乳歯の種類と役割は次のようになります。
乳中切歯(にゅうちゅうせっし)
真ん中から1番目の歯。最初に生えてくる歯で食べ物を噛み切る時に使用します。
乳側切歯(にゅうそくせっし)
真ん中から2番目の歯。乳中切歯と同じく食べ物を噛み切る時に使用します。
乳犬歯(にゅうけんし)
真ん中から3番目の歯。食べ物を引き裂く際に使用します。
第一乳臼歯(だいいちにゅうきゅうし)
真ん中から4番目の歯。食べ物を噛み砕いたりすり潰す際に使用します。
第二乳臼歯(だいいちにゅうきゅうし)
真ん中から5番目の歯。第一乳歯と同様に食べ物を噛み砕いたりすり潰す際に使用します。
順番や時期が異なりますが2~3年で乳歯は生え揃います。
一般的な乳歯が生えてくる順番と時期の目安は次のようになります。
①乳中切歯(生後6か月頃~)
下顎から先に生え始めます。
最初の頃は隣り合う歯の間には隙間がありますが、歯が生え揃うにつれて小さくなっていきます。
②乳側切歯(1歳頃~)
③第一乳臼歯(1歳6か月頃~)
臼歯は溝が細かいので丁寧な歯磨きを心がけてください。
④乳犬歯(1歳6か月~2歳頃)
食べられるものが増えてくる頃です。
また、様々な「食べ物の味」を覚える時期でもありますので、甘いおやつを与える際は、量、時間、ケアの管理を注意して行ってください。
⑤第二乳臼歯(2歳~3歳頃)
乳歯が全て生え揃い、歯と歯の隙間は少なくなります。
この頃に歯並びが気になる場合は早めに歯科医院に行って検診をしてもらうと良いでしょう。
乳歯は永久歯に比べると虫歯の進行が早いため注意が必要です。
乳歯の時期の虫歯や歯並びの異常は、永久歯への虫歯や歯並びにも影響してくるので、乳歯が生え始めたらケアの方法や歯を強くするフッ素を塗るために歯科検診に行くことをお薦めします。
乳歯の歯並びが悪くなる要因
口呼吸や指しゃぶりの癖で歯並びが悪くなることは想像できると思います。乳歯の歯並びが悪くなる原因は様々あり、歯に強い力が長時間続く癖は顎の形に影響を与えます。では、どのようなことが乳歯の歯並びに悪影響を与えるかをご紹介いたします。
指しゃぶり
指しゃぶりを長く続けていると出っ歯や開咬の原因になります。
また、吸う力が長くかかると上顎が狭くなり、奥歯の噛み合わせがズレてしまう恐れがあります。
目安として、5歳を過ぎても指しゃぶりの癖が残っている際は止めさせるようにした方がいいでしょう。
口呼吸
上顎と鼻の空洞は繋がっているので、鼻呼吸をすることにより鼻の空洞が広がり上顎の成長に直結します。
しかし、口呼吸を行っている場合は上顎の成長が促されず狭くなってしまいます。
口呼吸を行うということは常に口が開いている状態なので、前歯の噛み合わせが浅くなってしまう恐れがあります。
下唇を噛む
下唇を噛むと、上の歯は外側に押し出されるため出っ歯の原因になります。
また、下の歯は内側に押されるため顎の隙間が狭くなるので凸凹の原因にもなります。
舌を出す
ものを飲み込む時は舌を上顎にくっつけながら飲み込むのが正しい飲み込み方です。
ものを飲み込む時に舌先を前に出してしまう癖がある場合は、前歯を外側に押し出す力が掛かるため出っ歯や開咬の原因になります。
硬いものを噛まない
硬いものを食べず柔らかいものばかりを食べていると、噛む動作をあまりしなくなるので、顎の筋肉が発達せず顎が広がりません。
顎が狭いと歯が並ぶためのスペースが確保されないため凸凹の歯並びになってしまいます。
ただし、問題は食べ物の硬さではなく噛む回数なのでご注意ください。
頬杖をつく
頬杖をついていると奥歯に力が加わるため噛み合わせが悪くなったり顎の形が変形してしまいます。
本を読む時やテレビを見る時は注意して子供の様子を見守る様にしましょう。
寝る時の姿勢
横向けやうつ伏せで寝ていると一定の場所のみに力が掛かるため、顎の形が変わり噛み合わせが悪くなってしまう恐れがあります。
子供が寝る時は、仰向けで寝やすい状態を作れるように工夫してあげてください。
枕の高さを調節するだけでも仰向けで寝るようになったという話もよく聞きます。
乳歯の歯並びをきれいにするためには
乳歯の歯並びは悪い影響を与える癖を改善すればきれいになります。
また、保護者の方の工夫でも状況は変わるので参考にしてみてください。
虫歯を作らない
乳歯が虫歯になり歯が抜けてしまうと、永久歯がまっすぐに生えてこれなくなる可能性が高くなります。
歯が生え揃う2歳頃になると色々なものが食べられるようになり、虫歯リスクも高くなるので、保護者の方は丁寧に仕上げ磨きをしてあげてください。
噛む回数が多くなる料理を食べさせる
よく噛んで食べることは顎の発育に繋がるので、歯並びに対して良い影響を与えます。
ただし、子供に対して「よく噛んで食べなさい」と促すよりも、野菜などは少し大きめに切るなどの工夫をしてあげるとよいでしょう。
噛み癖を治す
爪噛みや洋服の袖、シーツなどを噛んで引っ張ると噛み合わせが悪くなります。
これはストレスや不安が癖として出ている場合があるので、注意をして直させるより、別のもので注意を引き遊んであげたり、日常的なスキンシップの時間を増やすなどして、子供の負担にならないように工夫するとよいでしょう。
歯並びは遺伝するのか
歯並びに関する遺伝では、顎の大きさや歯の大きさといった、骨格としての遺伝子情報が親から子供に継承されます。
ですから必然的に歯並びも伝承する可能性が高いと言えます。
しかし、間違ってはいけないのが、この場合の遺伝は両親からの遺伝子情報が、変化なく子供に継承されるというイメージです。
仮に両親が出っ歯だから、子供も必ず出っ歯になるというわけではありません。
歯が生え揃い親と比べてみたら、「やはり出っ歯になっちゃった」というのは結果論であり、100%が遺伝という訳ではございません。
子供の歯並びにおいて、遺伝の影響は3割程度と言われています。
残りの7割は「生活習慣」ですので両親から優秀な歯並びの遺伝子情報を継承したとしても、生活習慣により子供の歯並びが悪くなる可能性は大いにあり得ます。
乳歯の歯並びの悪さが及ぼす永久歯への影響
乳歯の歯並びが悪い場合、永久歯に対しても悪影響を及ぼす危険性があります。
顎の骨格が本来発育すべき大きさまで進んでいないことが原因で乳歯の歯並びが悪い場合、矯正歯科や小児歯科と協力し顎の骨格を発育させないと、大人になっても顎の骨格の大きさが不十分なままです。
顎の骨格が小さいと顔の輪郭において顎が引っ込んだ見た目になったり、いびきをかきやすくなり、睡眠時無呼吸症候群に繋がる可能性があります。
さらに、歯並びが悪いことがコンプレックスになっている場合、口元が気になってしまい上手く笑えなくなってしまいます。
すると性格まで暗くなってしまうことも多いと聞きます。
また、歯並びが悪いと歯磨きの際に磨き残しができやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
まだ乳歯だから大丈夫だと思って油断をしていると、永久歯に対しても悪影響を及ぼし、結果として若いうちからどんどん歯を失うことにもなりかねません。
まとめ
乳歯にはものを噛む役割の他に、永久歯を正しい位置に誘導する役割もあります。
永久歯に生え変わるからと言って、虫歯になった乳歯を早くに抜いてしまうと、歯並びや噛み合わせが悪くなる可能性が大きくなります。
また、歯並びの悪さが気になる場合は生活習慣を注意深く見ると改善点がわかる場合もあります。
最近では下の前歯が生えてきた段階で検診やフッ素塗布などで来院される、高い意識を持った保護者の方も多くいらっしゃいます。
子供のきれいで健康的なお口の中の環境を維持していくためにも、保護者と歯科医院が協力して頑張っていきましょう。